私と同じく英語を勉強中のブラジル人と話したとき、各国文化の話題が出た。ブラジルといえばリオのカーニバルしか思い浮かばなかった私は、とりあえずの話題として祭の話題を振った。
「君の国はカーニバルが有名なんだよね。あのお祭りの時ってみんなお店を閉めちゃうって本当?」
ブラジル人はしばらく黙り込んでから口を開き。
「うん。昔はあったよ。今はそういうことはないけどね。」
私は混乱した。リオのカーニバルは有名だ。先日もクジャクのような飾りを振って踊るダンサーの写真を見たばかり。もしかすると彼は、今は祭りの時期じゃないと話しているつもりなのか?お互い勉強中だから上手く伝わっていないのかも知れない。
「え、今でも続く大きい伝統的な祭りだって聞いたよ?」
「そういう文化はもう廃れているんだ。人は食べないよ。」
その話題を続けようとすると、彼は言いにくそうに否定する。どういうことだと悩んでいると、横で聞いていた先生が歩いてきて。
「カニバルじゃなくてカーニバルよ」
私は慌てて、カーニバル?カーニバル!と発音を言い直した。彼は首を傾げてカルニバル、カルバ?お互い上手く通じていない。
その後は先生が訂正してくれた。
あのままだと、私は「君の国では人食い祭があるんだよね。」と聞く失礼な奴になっていた。学術的な話をしていたなら問題なかったかも知れないが、それでも普通は初対面で話すような内容ではない。
似たような発音の言葉でも、文脈によっては意味をくみ取って貰えないこともある。特にこういう差別的に取られかねない内容は怖い。